<コイン型文明とジャンケン型文明>
コイン型文明とジャンケン型文明の対比を通して、関係性の中に勝敗関係を決めるという日本における人間関係を論じた書。
西欧では、コインの裏表で白黒の決着をつけることから二元論的な人間関係を求めている。そこからは、「独り勝ち」が正しいと考えられ、後には衝突しか残らない。
一方、日本は、ジャンケンという三すくみの関係性の中に勝敗を決める。そこからは、循環性や共存という発想が出てくる。
<日中韓の三すくみ>
著者は、いくつもの例を挙げて、この三すくみの関係性をもってパワーバランスをとるというアジアの知恵が紹介されている。
日本は、過去に何度か中国と対等な取引をしようとして、その間に朝鮮半島の国や琉球王国を仲介者としたことがある。著者によれば、半島が強いときは、日中のパワーバランスもとれていて、半島が弱いときはバランスが崩れると言う。
確かに、日本の歴史教科書でも、琉球と朝鮮を通して、日中が政治的な行き来をとった話は何度かでてきている。そのパワーバランスまでは気にしなかったが。
<三方一両損をアジアに適用できるか>
日本国内では、三すくみの関係性、あるいは、三方一両損の関係性はあちこちで見ることができる。そのことで、独り勝ちがいない代わりに、一人負けを防止し、循環性を利用した共存関係、ないしは、共存体・共同体を見出すことができる。
こうした循環性による共存関係を果たしてアジア共同体、世界共同体に発展できるのかどうかとなると、いささか疑問ではある。それは、共同体的な発想には前提となる観念があるように思われる。
たとえば、日本語は人口1億人の日本は生活するのも経済活動するのにも便利である。一歩外国に出ると日本語のメリットが全くない。だから、ほとんどの日本人は、国内にとどまるというだけで、かなりのメリットがある。
そう考えると、日本は現代のガラパゴスであり、決してアジアのリーダーになったり、調整役になることはないだろう。
ただ、三すくみでもってアジア共同体を構築しようとするなら、「陰陽」の関係性がヒントになるかもしれない。
易経では、陰陽の関係性を相互補完性とし、人と人、国と国(当時は諸侯という意味だろう)の関係性は共存ないしは依存の関係であり、必ずしも主従関係に限る二項対立構造をとっていない。
<今後の日本>
この手の思想書に多いのだが、問題点を提起しておきながら、解決へのヒントが放りっぱなしになっている。もうちょっとだけ、踏み込んでくれればよいと思うことが多い。
経済的に成熟した日本が次に目指す幸せの姿として、環境に優しい生活や日本的経営が挙げられることがあるが、そもそもの幸せの構成要素を考えてみるとよいと思う。
そのひとつとして、「長く生きていてもいいよ」と言われる価値観が挙げられよう。つまり、人は長生きし、しかも、幸せでいられるような世の中の創造だ。
今の年寄りは、病気による突発的な支出を心配し、金をため込んでいる。それに対して、政府も経済評論家も批判的な立場になっている。
また、年寄りの小言というのも、人生70年という時代なら、リタイアして10年もすれば死んでしまう人の話だから聞いてあげようということになる。しかし、人生80年となれば、少なくとも20年は居座り、下手をすると40年もいるわけで、煙たいのを通りこして、邪魔者扱いされても無理はない。
経済的にも精神的にも、他の世代から敵視される存在にいるわけだから、心の底から尊敬されたり大切にされることはないわけだ。幸せからは程遠い結果になるだろう。
とは言え、現在の人口構成は人類史上初めてなのだから、どうしてよいのかわからないだろう。儒教精神の強い韓国であっても、早晩、同じような苦悩が生まれてくるのではなかろうか。
10年もたてば、団塊の世代が後期高齢者となる。人口の多い高齢世代を満足させながら、暮らさせるにはどうしたらよいか。
年寄りによる年寄りのためのコミュニティーを作ればいいかというとそうではない。年寄りは年寄りが嫌いだ。かといって、子どもらと鬼ごっこができるわけでもない。
結局のところ、若年層が働いている間に、高齢者とコミュニケーションをとってくれるようなサービスが必要になるかもしれない。しかも、地域の高齢者の居場所を確保するということは、いわば、年寄り向けの保育園をつくるようなものだ。
それがデイサービスのような施設になるか、家族の集まりになるのか、あるいは、複数同時選択で乗り切るのか。
今のところ、生涯教育の一環としてではあるが、高齢者向け事業において、市町村が高齢者が集まって事業を展開する企画が出てきている。
保育プログラムのように確立されたプログラムがなく、また、高齢者の心身の状況が多岐にわたるため、プログラムの創造には時間がかかると思われる。
さらに、日本は、高齢化と少子化が同時に進む先進国であるが、中国も一人っ子政策の影響で急速に高齢化が進むことが予想されている。
日本が高齢化&少子化プログラムの策定に成功すれば、そのスキームを海外向けにサービス輸出することもできるだろう。
私的には、年寄りの本来の位置づけ(たとえば、戦前の年寄りの家族における地位と機能、仕事)を参考にしてみることもよいと思う。今の70歳代は孫の面倒もほどほどにして遊んでいる。動けなくなった途端に、家族介護を望む。これでは、気持ちよい介護など受けられるわけもないだろう。
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