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2009/05/22

危機を超えて/伊藤元重 ~ 今さらですが伊藤元重を読んで

危機を超えて 伊藤元重 講談社 1,200円 090223発行
読書日:2009.5.1

一言でいえば、世界大不況の中で、日本の不況はどう生じているのかを説いた一冊。

伊藤元重氏といえば、加藤寛氏に並んで、経済学の入門書の大家とも言える人だ。
会計士試験を受験する20年ほど前に読んだ記憶がある。
そういった著者が、最近どんな内容の本を書いているのだろうかと思って読んでみた。
まあ、一般的な経済評論家レベルの内容だったので、ほっとしたような、物足りなような。


印象的な箇所がいくつかあったので、紹介したい。

<金融機関への公的資金の注入>
 これをしないと、預金者の取り付け騒ぎがおきる。銀行は、払い戻しに対応するために貸しはが
しをすることになる。
 消費者のタンス預金と企業による投資抑制が生じ、当然GDPが落ち込み不景気のスパイラルに
突入する。

 アメリカにおける1929年の大恐慌を見ての対策であり、その二の舞になることを避けての行動だ。
 2008年9月のリーマンショックでとった米国の対応、および、日本国内での第二地銀やJA農協
などへの政府支援の態度が功を奏する形となった。

 言われてみればシンプルな内容なのだが、意外とマスコミ報道や経済本では、こうした流れが書
かれていない。
 複雑そうなものを簡単に書くところが、本当の意味での頭のよい人なのだろう。


<消費税を上げても不況にはならない>

 同氏は、日本の不況は、円高修正による面もあるが、それ以上に日本政府の財政不安からくる国
民の将来不安への表れとしている。

 彼自身が58歳であることからも、実感として持っている感情なのだろう。
 確かにそうだと思う。
 リーマンショック以来、宝石や高級腕時計が売れなくなっているのは報道で知るより以前に、
私の周囲でも聞くところである。
 たとえば、ソーシャルダンス・スクールの生徒が急速に減っていることからもわかる。
 ダンス・スクールは、レッスンだけでは済まず、ホテルでの発表会(デモンストレーションと言うらしい)
への参加にあたり、きらびやかな衣装とパーティー券を購入(配布)しなければならない。
 さすがに応援団がひとりもいないというわけにいかないのだろう。

 将来不安が景気回復の障害となっているのであれば、この不安を払拭するには、日本政府の財政
不安が解消されればよいという理屈になる。

 政府の具体策としては、消費税を20%に引き上げることが試算として提示されている。
 同氏によれば、これで将来見通しがつくのであれば、今以上の不景気にはつながらないだろうと
している。

 消費税については、低所得者層への配慮がうたわれるところだが、貯蓄をため込んでいる高額所
得者からも、また、税務署が捕捉しきれない脱税者からも、あまねく徴税できる仕組みであり、必
ずしも悪いとは言えない。
 要は、道具を目的にあわせて上手に使えばよいということだ。

 個人的には、日用品への軽減税率を設定するよりも、定額給付金やら所得税の低率減税などで、
低所得者層に配慮すればよいと考える。
 思うに、消費者が家計の収支を考える上では、どちらの方策でも必要水準までは消費が増えるが
、それ以上は増えず、どんな方法をとっても最終的な一般消費財への消費水準はあまり変わらない
とうからだ。
 消費者は賢く消費行動をする。贅沢品については広告に煽られて衝動買いすることもあるが、日
常の消費については、あまり大きなインパクトを与えることはない。

 逆に、業者側、生産者側において、日用品を作った方が儲かるというような思考に陥れさせない
ようにした方がよいだろう。
 結局のところ、薄利多売で利益を稼ぐのは厳しく、その結果、研究開発分野が立ち遅れる可能性
がある。

 日本は技術立国でしか生きていけないのだから、電気、機械はもとより、特に今後の特許競争が
激化する農業や医薬、化学の世界で十分に研究開発費を確保できるよう配慮する必要がある。
 また、日用品ではない部分に環境産業、いわゆるエコ商品が数多く含まれている点にも配慮しな
くてはならない。
 つまり、消費税の軽減税率が適用されない日用品以外の分野では、相対的に消費がされにくくな
る。この分野での研究開発も継続していってもらいたい。
 そういう意味で、消費大国のアメリカや、観光事業や金融市場、あるいは、アジア諸国の下請け
で成り立っているようなEU諸国のマネする必要はないと思うのだ。

 伊藤氏も、医療、住宅、雇用政策、教育・研究という分野は、政府が関与しないと大きな市場に
なりにくいとしている。
 そのため、政府がディマンドサイドを牽引し、市場がサプライサイドを管理すればよいだろうと
いう結論を導いている。
 結局のところ、従来の日本の財政投融資政策を踏襲すればいいという、ケインズ経済学から出て
いないというところか。

 確かに、時代は「剥」の時代。すなわち、張りぼて部分、お化粧部分が剥がれ落ちている時代だ。
 そういう意味で、下手な金融政策をとらず、また、一般投資家(消費者)も実体を知らないような
金融商品に乗せられずに、行動すればいいと言えるのではないだろうか。

 剥がれ落ちた後には、それこそ、文科省が言う「個性」の時代がくるだろう。と言うより、それしかない。
 最後には自分自身が武器になるわけで、自分の特性や特技、強み、価値観、あるいは、自分があ
こがれているものをしっかり意識して、自分の成長をはかればよい。
 しかも、そういったものは、自己啓発セミナーなどで自分探しをするものではなく、日頃の勉強
や仕事、活動の中で、自然に特徴が明らかになってくる。そこを自分で、あるいは、周囲の人から
定期的に聞き取ることを続ければいい。

 みんなが幸せになれるようにと願って、多くのNPO、財団・社団が設立されているが、まずは、
人の世話より自分を知り、自分や家族の面倒をしっかりみてもらいたい。
 自然や他人の世話をするとことは、実は、自分が一番癒される。しかし、その段階に至るには、
まずは、自分自身が一通りの成長や責任を果たして、その御褒美として、他の世話をしたらよい。

 そもそも、生物は、自分の子孫繁栄をしたら命を失うのが常である。
 人間だけだろう。子が成人しても生き残り、自活しなければならないのは。

 確かに、基本的な認識は小学生くらいから身につける必要はあるだろう。たとえば、エコ教育や
金銭教育を小さいころから施しておくなど。
 しかし、非営利活動は、まさにマンパワーが必要だ。子育てを卒業したと自他ともに認められる
段階の人が行えばよい。

 近年、社会起業家ということばが出てきている。
 しかし、本来の個人として、社会の一員としての務めを果たしていない者を集めても、逆に社会
貢献にならないと感じる。
 子孫繁栄の責任から解放された、具体的には、定年退職を迎えたビジネスマンや子育てから解放
された主婦をとりまとめる役割を担うものであろう。
 となれば、若年層による社会起業家は高度なコミュニケーションと老人心理学、貢献分野の専門
知識を持ち合わせている必要がある。

 一見、社会的意義が高そうなだけに、あこがれだけでNPOや社団を設立しても苦労するだけで
ある。
 非営利でも、継続させることができなければ、頼りにしている人たちに対して、結果、迷惑をか
けることになるのだから。

 会社にすると営利目的だから、お金をもらって社会貢献するのはおかしいなどという者がいる。
 しかし、その考え方自体に無理がある。
 どんな形でも他人や人類によいと思われる影響を及ぼせば、それが社会貢献である。
 先行きの資金計画がいい加減で崩壊しそうなNPOや社団を立ち上げるよりも、軽い気持ちで会
社を設立する方が、よっぽど、確実に社会貢献できるだろう。
 結束や管理が中途半端な組織は崩壊しやすい。それにくらべ、零細企業の方が、よっぽどつぶれ
にくいという事実がある。

 そして、税金を多少払うこと。
 前述の金融機関への公的資金注入で、金融恐慌を防いでいる。その原資は当然に税金である。
 企業家であれば、お金の流れが止まれば、事業が立ち行かなくなる。そのための予防線として、
ある程度の税金を納めることは必要だろう。
 税金への知識が高ければ、納める税額を調整できる。つまり、払いすぎる必要はないが、過度な
節税が脱税を招くことも防げるようになる。

★印紙税のウラワザ★
http://www.jiyugaoka.jp/inshi/index.html
★小さな会社の節税ダイエット★
http://www.jiyugaoka.jp/taxdiet/index.html

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