2018/11/11

書籍・老人の取扱説明書(SB新書)


 ”都合の悪いことは聞こえない””突然怒鳴りだす”...困った老人の習性10選を紹介したお医者さんによる本。
 何万人もの老人と接してきた著者のよれば、身体的老化が原因とのこと。

 脚力や骨盤底筋の衰えというのも各種健康雑誌や健康TVで紹介されているが。
 特に周囲をイライラさせるのは聴力の衰えが原因になることが多いそうだ。
 嫁の言うことだけは聞こえない、人にはうるさいと言いながら自分は大声で話す。
 だが、その原因は高音が聞こえない、音量が低くて聞き取れないからだそうだ。

 50歳を過ぎた私としても、若干感じるところがある。
 高い声は聞き取れるのだが、声量が低い声については最近急に聞き取らなくなってきた。
 今まで何度も会って話をしてきた相手であるのに、だ。
 まあ、悪口も聞こえなくなるのでストレスが減り、健康で長生きするという話も聞くが。

 周囲の高齢者を見ていて思うに、疎まれる老人は、たいていの場合、ズケズケとモノを言ったり、価値観を押し付けたり、無責任で勝手な行動をとる。
 どうでもいい話を多忙な現役世代をつかまえて聞かせる。大事な話をするにしても前置きが長くて時間がかかる。自分がやったことの責任を家族に転嫁する。
 疎まれて当然の言動が多い。

 しかし、こうしたことは、老人に限らず、現役世代でもみんながちょっとずつやっている迷惑でもある。
 多少のことについては、お互いに愚痴を聞いてお互いのストレスを軽くしているともいえる。
 ただ、相手が現役を退いているとなると、若い世代は、目の前の高齢者は自分に共感しないだろうし、下手をすると昔話や説教が始まるかもしれないとなどと不信感を持つものだから、話し相手としては避けるようになる。

 私が話していて、この人はいい年寄だなぁと思った人がいる。
 その人は、私に冗談話をするのだが、別れ際に「話を聞いてくれて、ありがと」と言うのだ。
 お礼を言われれば、他人に良いことをしたのかもしれない、などと思う。時間を無駄にした気持ちも消えていく。
 また、この人は、自分が他人の時間をとって迷惑をかけていると意識しているといことがわかる。気遣いから出た言葉なのだろう。
 では、自分が年寄になったとき、この「ありがと」が言えるのかと問われれば、言えるという確信はない。そんなことをも考えさせてくれる一言だった。

 一人親方で、デスクワークが多いものだから、高齢にならずとも、コミュニケーション力が下がる。これ以上下がらないように、できれば、もう少し話ができるようになりたい。
 外に出て周囲と話をするが一番よいのだろうけど、自分も周囲も現役世代だから、そうそう毎日茶話会に時間を費やせるわけでない。
 となれば、自主トレーニングだ。話をするには活舌と論理が大切と聞く。親書を読んだり、文学作品を朗読・暗唱するのがよいも聞く。
 どれをやっても、余生50年間を過ごすには有益だろう。
 しかし、始めるまでに、これまた時間がかかる。これも老人特有の習性か。いや、これは性格のせいか。

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2018/06/26

【読書】君たちはどう生きるか


 今更ながら読んでみました。

 主人公・コペル君へのおじさんの的確な質問がなかなか勉強になりますね。

 おじさんからの質問で、消費しかしていないコペル君が社会に貢献していることは何だと思う、というのがありましたが。
 正解はないとのことでしたが、どんなことでしょう。

 コペル君が、勉強や文化を引き継ぐことで、将来の日本や世界のを担っていけるようになる、つまり、先行投資を受けているということなのでしょうか。
 これだと、小中学生に期待を寄せた答えですね。

 現在あるインフラを使うことによって、インフラの維持(継続)に貢献しているということなのでしょうか。
 これは、内需拡大策を主張するコメンテーターみたいな答えですね。
 でも、これは、コペル君に限らず、世間一般の人が消費を通して社会貢献するということが言えます。
 鉄道や電気、水道といったハード・インフラを使い続けることは、供給者側に需要を伝えることになり、インフラの更新や改良につながります。
 法律や自治会の子ども会や防災・防犯活動といったソフト・インフラを使うことも同様ですね。改正を促しつつ、よりよいインフラに改良されていくことになります。
 ごく最近ですと、世界遺産に指定された日本の”古いもの”も利用することによって維持・管理・保管がなされています(いくことになりました)。

 そのほかの解答例としては、、、思いつきませんが、文脈からして経済学(経済合理性)のアプローチで考えればよいのかなとは思います。

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事務所概要2018.06.26

ホームページもご覧下さい http://www.jiyugaoka.jp

■ クレド(当事務所の信条、志、約束)
「小さな会社を元気にする会計事務所」
社長が元気だとうまくいく 10年以上、社長さんたちの税務相談や経営相談をさせていただいてきました。

 そこでわかったことは、社長が元気なら、会社がもうかるということです。 私が「それは速すぎですよ」「キャパシティが足りないですよ」とアドバイスしても、元気な社長さんは目の前の壁を突き破って目的を達成してしまいます。

 「アイディアが浮かばない」「売上が伸びない」「いい商品が見つからない」「社員・従業員が思うように働いてくれない」「月末には資金繰りで奔走している」など経営上の課題・悩みはつきないものです。

 また、人として生活していれば、家族に病人が出たり、親戚・知人から断れないような頼まれごとをされることもあります。ときには、仕事が手につかないほどやっかいなこともあります。

 そういった課題や悩みを抱えすぎたとき、社長は元気をなくします。経営に集中できず、業績が落ち込みます。

■ 元気な社長の成功法則
 実は、そうなってしまう原因はわかっています。
 それは、小さな問題や失敗をそのままにしていることです。
 怖いことに、これを放っておくと「利息」がついて返ってくることです。

 小さな失敗・ミスを些細なことだと思って放っておいたとしましょう。
 その間にお客様が増え、取引額が伸びてきた。そのとき、再び同じ失敗をするとどうなるでしょうか。
 当然、以前よりも被害が甚大になります。

 例えば、「ちょっとした品違い」。商売をしている人なら、誰にでもあることです。ちょっとした聞き違い、言い違い。
 取引量が少ないときは、すぐに取り替えることもできるでしょう。販売先に頼めば、待ってもらえるかもしれません。たとえ、キャンセルになっても、その損失は少なくて済みます。
 しかし、取引量が増え、上得意の販売先に「ちょっとした品違い」をしてしまったらどうなるでしょうか。
 販売先も予定を抱えていることでしょう。仕入先も一度出荷したものを戻されても困るでしょう。まして、オーダーメイドなら返せません。
 つまり、売上・利益を失い、会社の信用も失うことになるのです。

 こういう現象を「未完結のわだかまり」と言います。

 つまり、元気な社長の成功法則は「未完結のわだかまり」を残さないこと。まずいと思うことがあれば、すぐに解消しておくことです。

■ 課題や悩みはつながっている
 社長さんたちの「未完結のわだかまり」の解消を手伝ってきてわかったことは、たいていの場合、課題や悩みは何らかの形でつながっているということです。
 社長、家族社員、幹部社員の価値観や思考、感性、能力が、課題や悩みをもたらす共通の原因となっていることがあります。

 問題なのは、そのことに、ご本人たちがなかなか気づけないということです。

 人は、好きな仕事に自信と思い入れを持って取り組んでいます。そこには、会社全体の価値観や思考、感性、能力が反映されます。
 時代の変化などにより、そうした自信や思い入れが、課題や悩みの原因となることがあります。
 しかし、社長さんたちは自らの信条に基づいて行動しているので、その原因にきづけなかったり、きづいたとしても自己否定につながるので、無意識に無視するようになります。
 一方、惰性で仕事をこなしている場合は、そのこと自体に気づけないでいます。

 多くの人は安定を求め、変化することを嫌います。世の中の流れが変わっても、人は、無意識に仕事の内容を変えないようにしようとします。
 こうした心の状態が、課題や悩みを引き起こしていることもよくあります。

 当事務所は、会計指導、税務相談、経営分析をきっかけとして、経営全般についてお話を伺います。
 会計や税務だけでなく、販売や人事についてもご要望があれば通常の訪問時間内にお話を伺い、課題・悩みの根幹を探り、解決のヒントを一緒に考えさせていただきます。

 社長さんたちに元気になってほしい。事業で成功してほしい。ご家族や社員・スタッフの皆さんを幸せにしてあげてほしい。
 それが当事務所の願いであり、その実現のために社長さんをサポートすることが当事務所のクレド(信条、志、約束)です。

■ 専門家としての3原則
 専門家として、以下の3原則を遵守することをお約束します。

・顧客と社会に信頼されつづける人格と技量を維持・向上させ続けます
・相談業務を行う上で、人の可能性、個性、強みを最大限に引き出し、お互いに対等な立場で、感謝、協調できる関係を築きます
・専門家として、あらゆる環境変化に対応できるだけのリソース(知識・ノウハウ・経験)を身につけ、社会のお役に立てるよう、情報を発信し続けます

■ 所長プロフィール
<略歴>
昭和41年目黒区生まれ、公認会計士・税理士
慶応義塾大学理工学部数理科学科数学専攻卒業
公認会計士矢田慶來事務所所長
日本公認会計士協会目黒区会会長(元)
日本公認会計士協会東京会選挙管理委員

<業務>
 法定監査、経営相談、税務相談のほか、独立開業や執筆を対象にしたビジネスコーチング、ライティング・コーチングを事業展開
 目黒区監査委員(平成13年~17年)在任中には、監査事務局の監査体制を整備強化し、区長室・区議会に対しても果敢に監査を実施

<講演>
東京税理士会、青色申告会、産業能率短期大学、目黒区教育委員会、TKC下関ほか多数

<著書>
『税理士・社労士・司法書士のためのコーチング入門』
『税理士・社労士・中小企業診断士のためのファシリテーター入門』(ともに中央経済社刊)

<その他>
 趣味:ウォーキング、スクワットマジック、読書
 家族:妻、3児、母

<事務所基本情報>
名 称 公認会計士矢田慶來事務所
代表者 矢田慶來(やだけいらい)
所在地 〒152-0035 東京都目黒区自由が丘1-7-8
連絡先(Email) yada@jiyugaoka.jp
ホームページ http://www.jiyugaoka.jp

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2017/09/01

書籍:あきない世傳金と銀(源流編)


 最近では、店の看板に傷をつける、という言葉の意味が実感としてよくわからない時代だと思います。
 一般の消費者においては、その店の旦那が妾を抱えていようが、賭け事に店の金をつぎ込んでいようが、あまり意識しないでしょう。
 何人かのスタッフを雇っているお店ですと、月々給料を払わないとならないので、資金ショートを迎えると、その前兆を見せることなく突然に閉店し、利用者の記憶からもあっさり消えてしまいがちです。

 しかしながら、さすがに、仕入先や金融機関はよく見ているなぁと思います。
 社長が商売以外のことに没頭し始めると、商売がおろそかになり、売上=資金を確保できなくなる。女性やばくちだけでなく、分不相応な贅沢(なぜと思うようなイベントやパーティーの開催)をしても、取引先の与信記録に残るようになっています。
 自分の信用が落ちていることを知らないのは、当の社長さんだけだったりします。

 て、本書では2つのテーマが扱われています。
 ひとつは、、学問をしたいながらも家庭の事情で大坂の呉服屋で女衆として奉公に出された9歳の女の子・幸やその周りの大人たちの心の葛藤を描いています。
 もうひとつは、幸と番頭さんの質疑応答を通して語られる流通業の意義と店の信用です。

 主人公の幸が9歳ながらにして番頭さんに「お客さんはなぜ問屋から買わずに小売商から買うのでしょうか」との質問をする場面があります。
 番頭は好例を挙げて、問屋や小売の役割を紹介しますが、さらに、もっと大きな観点で流通を説明した箇所が印象的でした。
 たまに悪さをする連中もいるけども、大きな物の流れを円滑に進めることが流通業全体の役割だと。

 また、少しだけですが、物の流れと裏腹に資金の話が出てきます。
 商人が両替商に金・銀を預けて振り出してもらう手形の話です。
 幸は、紙が金・銀の代わりになることを不思議に思いますが、番頭との会話の中で、店の信用がこの紙片の価値を担保していることを知るに至ります。
 幸は、その信用に影響を与えることのひとつが旦那の素行であり、店の旦那が廓屋に通い詰めていることが町中の評判になることで、手形の信用が下がることも学びます。

 久しぶりに小説を読みましたが、人情と経済事情が混じった物語も面白いものですね。
 続編もあるようなので、次を読んでみたいと思いました。

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2017/03/13

秩序なき時代の知性

 哲学者や弁護士、学者との対談集。
 全体的にこの対談集は、楽しく読み進めることができた。

 ビジネス書作家の木暮太一氏とは、働くことの経済的な意味について話が展開されている。
 小暮氏は、マルクス経済について勉強するにあたり、自費出版で解説書を作ったという。かなりのバイタリティの持ち主なのだろう。
 その氏が、金持ち父さん貧乏父さんの本を読んで、やはり自分の理解が正しかったと述べている。私も同じように理解していたので、いまさらながらに安心した(正解とは限らないが)。
 佐藤氏はマルクス経済について解説している本があるのだが(資本主義の極意など)、直感的にわかる例示が少ない。マルクス経済と神学に関する本については、具体例が少なく、難解なものが多いように思われる。

 弁護士の水野祐は、デザインやITの知的財産権に強いようだ。
 佐藤氏によれば、AIが進むと公認会計士の仕事はほぼ消え、税務署との交渉の余地がある税理士が残るとか。
 これから弁護士になる人は、芸術やITなど、法律分野以外についての知識がある人の方が業務の専門化ができ、生き残れるだろうという点で、両者が合意していたのが印象深い。

 與那覇潤氏は中国化する日本という本で注目を浴びた新進の歴史学者だ。
 岩波文庫の日本通史を読んだだけで同書を書いたということで、従来の歴史学者と知識は異ならず、単に、ものの見方を変えただけだそうだ。同書では、彼の見方を伝えることもさることながら、事物の見方を変えるだけでかなり理解の仕方が変わり、あるいは、理解が深まるということも伝えたかったそうだ。

 本書を読んでいたら、就職当時を思い出した。平成の初めになるが、監査法人の代表社員と話していたら、彼らは「専門特化した」会計士を求めていると言っていた。ジェネラリストは必要ないと。
 しかしながら、クライアントの不正会計のやりくちを理解するには、質問力だけでなく、多角的な視点と想像力が必要である。
 専門特化するための下地として、やはり、広範な知識・教養を身につけることができれば、専門家になるにしても望ましいと思う。

 そうは言っても、具体的なテーマに直面しないとなかなか勉強する機会もないものではある。
 そんな中、世界の大国の動きに変化が出始めている。自国の利益を優先し、対外的な接触を減らす方向に動き始めているようだ。
 日本は世界の後追いをすることが通常なので、世界の動きの今をどう理解したらよいのだろうかと思いなおしていたところ、昨年には、ビジネスマン向けに世界史や地政学の本が多く売られるようになった。感じることはみな同じなのだろうか。
 そうした書籍の中で、高校の世界史教科書を読み返すことが推奨されたいた。さっそく高校教科書を購入し、目次を見てみた。すると、現在の大国を知る上で必要そうな項目が並んでいることに驚いた。
 国公立大学上位校に合格した人たちは、教科書のコラム欄まで暗記していると聞く。いやはや、社会のスタート地点において、すでに教養面で明らかな差をつけられていたことに今さら気づかされた。
 学習適齢期は過ぎてしまったが、死ぬまでニュースを聞いて楽しむために、歴史教科書を熟読してみようと思った次第である。

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2017/03/06

世界の宗教がわかる本 ひろさちや著 


 実は、読んだ本を図書館に返却したので、書名がわからなくなってしまった。
 まあ、著者の本はたくさんあるので、似たタイトルの本を挙げておく。

 面白いと感じたのは「どうしてキリスト教徒はおせっかいなのか」と「キリスト教では仕事が苦しみ」であること。
 前者は、聖書の記載をたてに、帝国政治が勢力を伸ばした口実に使われたものである。
 後者は、欧米人はワークライフバランスがとれているという話。日本人は、卑弥呼のころから、神とともに仕事をしてきたので、仕事をすることが喜びになっており、終業時刻になってもなかなか帰らないとか。

 現象を説明する上で、なかなか面白い分析である。
 著者の一般読者向けの本は、世界の出来事、特に米国と中近東との関係を分析することができるほどに役立つかどうかは不明だが、、一杯飲みながら雑学を交わすのにちょうどよいと思う。

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2017/02/27

だれが幸運をつかむのか 山 泰幸 著


 20年前くらいから昔話の「むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがおりました。。。」の書き出しがどういう意味を持つのだろうか、気になっていた。
 心理学者の本などでは、異空間へいざなうための決まり文句だとのことでしたが、部分的にしか納得できずにいた。
 本書では、この疑問にひとつの答えを提供してくれた。

 桃太郎や傘地蔵、蛇婿入、鶴女房、洟たれ小僧、花咲爺さんを例にとりながら、昔話の構造の構造として、子ども・富の欠乏・充足、無償贈与・そのお返し、犬(動物)からの施し・それに対する侮辱された感の組み合わせを提示している。

 著者の整理によれば、次の3人が幸運をつかむとのことである。
1)身近な人からの純粋贈与を受けることで幸運をつかむタイプ
2)見知らぬ人からの純粋贈与に気づいて、そのことにつねに感謝を示しながら生きることで、幸運をつかむタイプ
3)見知らぬ人からの純粋贈与に気づかずに、自らの才覚で幸運をつかむタイプ

 もっとも、程度の差はあれども誰でもこの3つの側面を持っているので、3つの人物像を手掛かりに自分自身の生き方やコミュニケーションを見直してみるのも幸運をつかむヒントになるのではないかと提案して締めくくっている。


 自分自身を見直してみるというのは、内観とでもいうか、自己啓発を促すようである。そのような活かし方もぜひ試みたいと思う。
 ただ、今回は、昔話の含意を知りたかったので、そのあたりについて、1点触れておきたいと思う。
 子どもが傘地蔵の読み聞かせを聞いても、「どうして苧環を傘に替えたのか?」「どうして地蔵に傘をかぶせるような無駄なことをしたの?」「どうして傘がひとつ足りないの?」「どうして爺さんの家の場所がわかったの?」と感じるこことはほぼなかろう。よいことをしたら恩返しがあるよ、くらいの物語になってしまう。
 10回も20回も聞くとだんだん気づいてくるのかもしれない。あるいは、囲炉裏端で昔話を聞いていたころは、おとなも子どもも混ざって聞いていたのかもしれない。何十回も聞いていると感覚的に周囲の純粋贈与なるものに気づけるようになるのかもしれない。

 まだ現役世代なので、専門書を読むのが優先となるが、易経あたりの繰り返し読みをして、本質を会得することに挑戦してみようかと思う。

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2016/08/28

英語化は愚民化


 英語化は、日本人の創造性を奪う政策である、また、新自由主義者が打ち出す政策の一つである、と論じている一冊。

 中でも面白かったのは、夏目漱石が、最近の学生は英語の勉強が衰えているという趣旨の話を書きとめていることである。
 明治期に、伊藤博文など政治関係者に限らず、岡倉天心、津田梅子らも欧州に留学・居住し、法律、芸術や文化に係る知識・語彙を持ち帰ってきた。
 先人たちの努力や経験をもとに、知識や語彙が日本語化され、日本の学生たちは母国語で学問をすることができるようになった。
 だから、英語への勉強熱が下がるのは自然な現象であるというわけだ。
 (私が英語に取り組まない理由もここにあるのだろうか、余計なひとり言だが)

 近年のグローバル化にのせた英語教育の過熱ぶりは、時流において行かれないようにという焦りによる消費者行動であろう。
 著者によると、新自由主義者が打ち出す政策には3本柱があると言われているそうだ。
 1.開放経済 ⇒ 貿易、投資、人の移動を国境の垣根を低くして自由化する
 2.規制緩和 ⇒ 政府による経済活動への規制は最小限に抑えるべき
 3.小さな政府 ⇒ 政府は財政規律を守り、公営企業は民営化してスリム化せよ

 日本語が英米から見ると関税障壁に見えるようである。だから、日本としては、開放経済を実現すべく、役所や企業でも英語を公用語として使用する方向で、小学校でも”英語化”教育を進めているそうだ。一部の大学ではオール・イングリッシュで授業をしているそうだ。

 本書では、外国の例を紹介しながら英語化の弊害をいくつか指摘している。
 英語を使いこなせるのは一部のエリートであり、使えない者との格差が当然に開いていく。しかも、その一部エリートにおいては英米の手先になってしまう怖れもある。
 また、知識や技術も英米から輸入してしまえばよいと考え、若者の創造性が低下することも懸念される。

 さて、読後に思ったことだが、専門職や独創性の高い人にとっては、英語化されてもそれなりにやっていけそうな気がする。
 すでに、研究・開発技術者、法曹、会計士などは部分的にではあっても英語化されている。
 一方、不動産関係や証券取引関係、地方銀行などはどうなのだろうか。国内エリートだが、英語化についていけるかどうか不明な部分もある。
 単純労働に従事している人は、英語化とは関係なく働けるかもしれないが、国境を越えて入ってくる外国人単純労働者と価格競争を行うことになるのだろう。小さな政府は、彼らに何もしないですませるのだろうか。

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2016/08/26

史論の復権


 「中国化する日本」で著者は、グローバル化が進むときには共同体や中間組織
(イエ、ムラ、会社)が崩れる方向に動くという主旨のことを説いていた。
 本書では、共同体や中間組織という「中間的なもの」を軸に7人の識者(学者
など)との対談をまとめたものである。
 第二次世界大戦後に膨れた中間層がバブル経済崩壊後20年を経て衰退し、経済
的に二極化してきていると指摘し、今後の日本(政治)が「中間的なもの」をど
う扱っていくべきかについて話している。

 私が属する自治体、商店街、同業者組合への参加率が低く、高いところでも15%前
後、6人に1人くらいしか参加しない。
 従前、こうした国と個人とをつなぐ中間組織への依存・需要が下がったものではな
いかと考えていた。
 自治体、商店街でいえば、個人が行政に単独でアクセスできるようになっている。
発表前情報や先行き情報を欲しいと言うのではなければ、加入するインセンティブ
がない。
 事業協同組合では、斡旋業務がかなり衰退している。共同購入や斡旋販売のよう
な卸小売業については、ネット販売や民間企業の努力により壊滅的になっている。
販売よりも、クレジットカードや保険に代表されるように、紹介手数料を稼ぐビジネス
になっている。また、公民ともに競争入札的な取引をするようになり、仕事の斡旋な
ども部分的にしか残っていない。
 結局のところ、手数料でもうけた組合は、組合費を下げることで組合離れを防ぐの
で手一杯というところが多いのではないだろうか。
 同業者組合も、昭和の時代は後輩の仕事の面倒をみてやっていたそうなのだが、
私が独立したころ(バブル経済崩壊後)にはすでにそのような余裕が組合員になか
った。
 いずれの共同体も、すでにその中で事業活動をしていれば何とか食えるという状
況からはかなりかけ離れているという状態である。

 一方、文科省は、地域の子どもを地域の住民が育てる、里山(ビオトープ)をつくる、
体育の授業に武道を取り入れるなど、パトリオティズムを意識した施策を進めている。
 今後の共同体は崩壊(あるいは解放というのか)する方向に向かうのか、再江戸
時代化により踏みとどまることができるのか。

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2016/08/24

<凡庸>という悪魔 


 思考停止の大衆は、大衆迎合的な言説にすがるようになることとその弊害につ
いて解説している一冊。

 近年のマスコミ批判とともに視聴者側の不見識さを問題を指摘する識見者も少
なくない。著者は、そうした学者の一人である。
 著者の専門は都市社会工学で、土木政策を推しており、現在は、内閣参与(近
畿地方の有力代議士が推薦したという話もある)でもある。

 著者によると、アダム・スミスの古典派経済学の前提には道徳情操論があるが、
フリードマンによる新古典派経済学あるいは新自由主義なる全体主義には、道徳
や倫理がなく、その点が古典派との違いなのだそうだ。

 著者の表現の仕方には賛否あるでしょうけども。
 そもそも、経済モデルは消費者や生産者の心理が単純に表現されているだけで、
基本的には大まかな方向性を示す手法として使われるべきでしょう。
 多くの人が目にする大学教養課程のテキストでは、1次線形で表されているく
らいで、パラメーターは少ないし、情報と計算の完全はないに等しい。

 経済政策を打ち出す際に、ある種の思想として学説が用いられていることがあ
る。経済施策ありきで、その論拠として経済理論(ケインズ、新古典派)が使わ
れているのであろう。
 では、経済施策は何かと言えば、つまるところ、為政者の”想い”だろう。
 想いとなると、必ずしも経済合理性を追求するわけではないから、学者や経済
評論家の目には為政者がわからず屋に映るのかもしれない。

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2016/07/21

佐藤優さん、神は本当に存在するのですか?


 今年2月に出版された一冊。

 「そんなバカな!」で、動物行動会社として、男の浮気について母親が寛大である理由を説明してしまい、学界からも一般女性からもバッシングを受けてしまった竹内久美子氏が、外務省OBで同志社神学部で修士まで取得している佐藤優氏と対談した内容をまとめた本。

 動物行動学者の竹内氏は、つねづね「何時の隣人を愛せ」のくだりについて疑問に思っていたそうで、これをカルヴァン派の佐藤氏に率直に問うています。
 対談は、ドーキンス「神は妄想である」をきっかけとして始まりますが、竹内氏は、親族以外の他人、さらには、世界の人々を愛することは動物行動学からして納得いかないとのこと。
 これにたいして、佐藤氏が、明快(?)に応えています。

 また、キリスト教が2000年も残り続けてきた理由として、佐藤氏は「いい加減な宗教だし、聖書には矛盾がある。だから二千年以上、時代の変化に耐えてきたんです。」と説明しています。

 世界史のテキストでも、313年のミラノ勅令で、ローマ皇帝がキリスト教を公認した経緯が記載されていますが、おそらく、為政者の使い勝手が良かった、解釈の幅が広かったということなのでしょうね。
 なにより、開祖・パウロがかなりの人たらしだったことが、公認された大きな理由だろうということです。使徒言行録はパウロの書簡だそうなので、今度、読んでみようかな。コミュニケーションに役立つかも。

 佐藤氏によれば、聖書は一連のお話がつづられているのではなく、個々、具体的な場面に合わせて、救いの途を与えているのだそうです。だから、場当たり的な話が並んでいて、矛盾もあるとのこと。
 そういえば、元日銀総裁の速水氏もキリスト者で、ビジネスマン向けに、聖書の言葉を抜粋したものを出版していましたね。

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2016/07/20

よくわかる民事裁判[第2版]


 法廷寸劇と大学の先生による逐次解説、といった内容です。

 2005年の発刊ですので、その後の法改正には留意が必要です。
 ストーリー仕立てで、初学者が民事訴訟法を勉強する前に読むには抵抗がないと思います。
 ある日、突然、家主から立ち退きを迫られた主人公が、弁護士と一緒に法廷で奮闘するお話です。

 さすがに、訴訟の進み方については、あちこちでつまみ読みをしていますので、寸劇に出てくる範囲の手続はだいたい知っていました。
 でも、解説では、各手続の意義、問題点が記されていまして、学習者にとってはヒントになりそうです。

 民訴は眠素とも言われるそうで、テキストだけを読んでいるとつまらんらしいです。
 私も民訴の基本書をまだ開いていないので、どうなっているのかわかりませんが。。。

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2016/07/19

お金に強くなる生き方


 元外交官の佐藤優氏の著書。2015/10/15発刊。
 内容としては、表面的には、主体的にお金と付き合う方法とでもいいましょうか。
 そうとらえると、既刊本にも似たようなものがありますね。自己啓発本にも似て。
 ただ、同氏の言いたいことは最後のページにまとめられているように思います。
 当たり前にあると思っているお金、国家、会社、家族という単位がなくなったらどうなるか、、、自分に問いを発してみよ、と。

 同氏は各章ごとに書籍を紹介しているのですが、なつかしい一冊を見つけました。「貧乏物語 (岩波文庫 青132-1)」河上肇著が紹介されていました。実家の顧問税理士が私に30年前に勧めた本です。
 それと、「21世紀の資本」トマ・ピケティ著。佐藤氏はこの著書については鋭い批判をしていたのですが、多くのデータで今後の日本と世界の行方を知るにはよいとして紹介しています。厚くて高い本ですが、そろそろ中古は安くなったかな。


 私は機会があると、80歳前後の人に戦後のどさくさ期の話を聞くようにしています。
 やはり、丁々発止やりとりできる人、交渉力が高い人、コミュニケーション力が高い人、そういう人が生き残っていたようですね。
 まあ、国民総力戦で第二次世界大戦に臨んだために、戦後、世界中で人権意識に火が付いたという話もあり(最近誰かに聞いたんですが誰だったかな・・・)、今更そういったことはないとは思いますが。
 国民総力戦などあったら、私なぞ最初に野垂れ死にしそうです。

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2015/02/22

書籍: 10代の憲法な毎日


租税裁判の本を読んでいるのですが、やはり憲法を学部生くらい読み込まないとならないのかなぁと感じておりまして。。。
難しい本から入るよりは、とりあえず、ジュニア向け図書を手にとった次第です。

司法試験予備校の主宰者でもある伊藤真先生の本ですから、読みやすさ、論点の絞り方など無理がありません。
伊藤先生と中学生との会話を通して、次のような内容となっています。
子どもらと学校との関係から国、地方公共団体の公務員と生徒の法律関係を事例で紹介しています。
親との関係で、子ども権利条約や幸福追求権について事例紹介しています。
生徒が街中で刑事トラブルに巻き込まれたときの少年法の扱われ方についても紹介されています。
(登場する生徒らは中学生ですが、事案からして高校生と読み替えても支障なさそうです。)

いずれも、生徒と伊藤先生との会話を通して、各事例における議論の中心(論点)を挙げ、伊藤先生のコメントが掲載されています。
だいたいのケースにおいて、解決の方向性を示すにとどめてあり、結論めいたことまでは書かれていません。紙面の都合かもしれませんし、読んだ生徒間で話し合ってほしいという意図かもしれません。
もし、輪読したなら、ぜひ、弁護士会や大学などの研究者を訪ねてほしいなぁと個人的に思いました。

本書は、未成年の日常と憲法との関係性がわかる一冊です。
夏休みの調べ学習など自由研究のテーマとして挙げるにはいい教材かなと思います。
今ならWEB検索で、各事案の判例を探してくることができますし。
もっとも、自分と法律との関係性に関心が湧く人に限られるのでしょうけども。
以上、ご参考までに。

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2015/01/29

本:経営計画の立て方・見直し方 岡本吏郎著

書籍:経営計画の立て方・見直し方 岡本吏郎著
2014/12/28発刊

 岡本吏郎税理士の本については好んで読もうとするのですが、実はよく読めて
いません。
 というのも、実は経営計画作成業務を私が提供するサービスに入れていないか
らです。もっと言えば、税務顧問先で経営画書を作成するほど規模のある会社を
担当していないから。
 ただ、岡本吏郎税理士の思想的な部分、世の中を構造的に捉える上手さに触れ
たくて読んでいます。

 本書でも8割くらいは経営計画作成業務のお話、2割が思想的なお話。しかも、
最終章を除けば、私が読みたい部分が点在しているので、結局全部読むことにな
ります。

 本書で印象に残った箇所からいくつか抜粋して紹介したいと思います。

p.188
 ある有名な寿司屋さんの話として、天然アジの旨さがわからない客の話
が紹介されています。天然アジを楽しむにも能力が必要ということです。
 私も天然と養殖の違いなどわかりません。それでも一緒に食事に出かけた人の
中に、職人が提供するものに対して感性が低いと感じることはあります。
 和食の店に行って、装飾花、お皿の柄、旬の料理、水菓子から季節感を得られ
ない方がいらっしゃる。季節感を醸し出す店はそれなりに高価なのですが、その
理由がわからないわけです。値段が高い店は何となく高級と思ってしまうらしい。
 逆に、季節に関係なくいつでも同じ柄の器を使っている店は安い店とも言える
わけですが、化学調味料の使い方が上手いと美味しい店などと言われてしまう。
 と言っている私は、こうしたことを知識として知っていますが、人によっては
食育を通してごく自然に身につけている。羨ましい。

 著者は、天然アジを旨いとわかる能力を”美観”もしくは価値観と呼びます。
『ゲーテは言います。
 「この若い人には才能があるよ。けれども、なにもかも独学で覚えたというの
は、ほめるべきこととはいえず、むしろ非難すべきことなのだ。」
 師に学ぶということは、”美観”を身につけることです。』

 練習をすればするほど、知識やテクニックが身につくが、それ以上に美観が身
につく。美観の備わらない練習は、いい加減な仕事のやり方を身につけることに
なってしまう。著者はこうした点を指摘しています。

 なるほど、商売をするにしても”美観”を伴っていると、その商売は「論語と
算盤」的になり、そうでないと節操のない新自由主義的な結果を招くってことで
しょうか。
 さて、私自身の仕事はどういう方向性なのか。。。まぁ、税金の計算に限って
言えば、きっちり、早く、美しくってことで、あまり難しいわけではないです。


p196-199で、アイデンティティの問題がとりあげられています。
 著者は、”機会を与えられる”ことをアイデンティティとして、また、他者に
よる承認と捉えています。
 マルクスの著書「ドイツ・イデオロギー」から『彼らがなんであるかというこ
とは、・・・すなわち、彼らが何を生産するか、ならびにまた、彼らがいかに生
産するかということと合致する』という件を紹介しています。
 つまり、”機会を与えられる”とは、「何を生産し、いかに生産したか」の結
果であると。
 著者は将来、「君はどういう機会を与えられたか?」と自身に問いたいとのこ
と。

 私が独立したころ、ある新年会で年配の電気工事士の人と席が隣になりました。
その時、「自分は生きてきたのではなく、活かされてきたと思ってる」と話して
くれたのを思い出しました。
 どこかで聞いたような話だなぁと思っていましたが、岡本的切り口で考えてみ
ると、20年経った今、その人が若かった私に商売する上で大事なことを
教えてくれたのかなぁと思います。

 従来、税理士業界での集客方法は主に紹介営業であると言われています。
 昨今、会計事務所を相手にして、フランチャイズ、顧問先紹介といった事業だ
けでなく、会計事務所コンビニ(ワンストップ・オフィスのことか?)というコ
ンセプト商売を提供する業者まで出てきました。
 岡本的切り口で言えば、かようなサービスを利用することは、「私は”機会を
与えられる”ことがない税理士です」と言っているようなもの、ということにな
るのでしょうね。(注;著者はそこまで具体的に言ってはいません)。

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2015/01/27

前田敦子はキリストを超えた: 〈宗教〉としてのAKB48 (ちくま新書)


 プロデューサー秋元康氏のビジネスモデルを構造的に分析でるかなと思って、
本書を手にした。
 同氏がAKBを売り出したころ、ラジオで商品コンセプトを「高校野球の負けチー
ムのメンバーから、敗者復活戦用のチームを組んだようなもの」といった感じで
紹介していた。
 高校野球のファンは、負けたチームや少年たちに対しても寛大である。そのファ
ン心理をうまく引き出そうという魂胆なのだろうか。
 本書では、秋元氏の指向性に触れておらず、AKBメンバーとファンの間にある”
相互に尽くす”関係を宗教団体に見立てて紹介している。

 著者は、AKBが醸し出す空間(メディア、劇場、握手会)において、AKBメンバー
とファンとの間で、相互に与える関係ができているという。
 ファンからメンバーに対しては「推す」関係、メンバーからファンに対しては
「好対応」や疑似恋愛。そこには相互に「何かに尽くす」という”経え”があり、
集まった人たちはそれを実践しているとのことである。
 ファンではない人から見れば、ある種の援助交際に見えるかもしれない、と著
者はあくまでも客観的な視点で語っている。

 私は彼女たちのファンではない。そのような私の目には、著者やファンの行動
は単純に日本人らしいと感じる。
 日本人は未だに汗水たらして働いている人を応援する性格である。地代や株の
売買で生計を立てている人に対して良い印象を持たない。
 日本人は、高校野球にせよ、AKBにせよ、発足当初のモーニング娘にせよ、応
援したくなってしまう。総選挙という言葉からも、議員たちのどぶ板選挙、握手
作戦を想起させる。どぶ板議員に対して有権者は今でも優しい。
 しかも、AKBのメンバーは儲かっているようには見えない。1票欲しさに一心
に取り組んでいるように見える。
 50歳代のプロデューサーがその感覚で仕込でいるビジネスモデルとも言えるの
だが、広い年齢層から支持されている。プロデューサーが日本人(あるいは人間)
の普遍性を掴んでいるとも言えるだろう。

 著者が元センターの前田敦子についてキリストを超えたという根拠としては、
利他性を主張している。
 彼女がセンターに就いたとき「私のことが嫌いになっても、AKBのことは嫌い
にならないでください」とのスピーチや、過呼吸で倒れながらもステージをこな
してきたことがその根拠なのだそうだ。
 なんとなく、長嶋茂雄がジャイアンツを去る時の一言を想起させられた。ちょっ
と違うが、構造的には同じだろう。

 また、彼女については、センターを一度外れて、その後「復活」している。著
者はこの点をもってキリスト性を主張はしていない。この点を外したのは、復活
は一度に限られるからだろうか。

 そして、センターに選任された前田、大島らは卒業させられ、天に昇る、つま
り、AKBの空間から外されるわけである。
 AKBの〇〇ちゃんから、単体の芸能人になる。当然、AKB時代ほどの人気はとれ
ない。もともと、AKBのファン全員が前田、大島のファンではないし、AKB時代ほ
どの露出度が保障されてもいない。
 第一、お金持ちに見えてくる。高校球児のごとき純粋性、見返りを求めない努
力が伝わらなくなってくる。

 あくまでも「AKBの〇〇ちゃん」としての支持を受けていたのであれば、
そこから外れることは、AKBとライバル関係にもなりうる。宗教で言えば、異端
者や異教徒になってしまう。このことはグループアイドルの宿命なのだろう。
 彼女らは昇天して神になるわけではなく、秋元氏に近づくわけでもない。あく
までも横滑りの位置づけである。

 結局、秋元氏こそが神のようなものではないか(そんなことは以前から言われ
ていることだが)。
 経年によるマンネリを避けるために、センターやメンバーの入れ替えを行う。
年数が経てば卒業させる。一方、全国のオーディションからもれた子たちを次々
と次世代メンバーとして補充する。
 全国のオーディションが1次的なアイドル発掘をしてくれるわけだから、秋元
氏はメンバー集めにゼロから取り組む必要もない。
 秋元氏のこのビジネスモデルは、構造上、保障されているに近いのではなかろ
うか。ご本人は何か面白いことを始めようというつもりだったそうだが。

 とても宗教的と感じるくだりがあった。著者によれば、前田は自分のアンチに
対しても、みんなと”家族”になれるように努めたいと訴えていたという。
 一見、自己犠牲の感もあるが、なかなか怖い一節だ。家族になったら縁切りが
難しい。AKBに係わった以上、同じ時空から逃がさないと訴えているようにも読
める。家族付き合いを求める点など結束の強い宗教団体を思わせる。

 AKBに限らず、グループアイドル、いや、プロ野球でもJリーグであっても、
そのファンの言動に日本人らしさを感じる。
 AKBが醸し出す空間が宗教の場であり、その中に各メンバーを「推す」ファン
が分派をなし、分派同士でアンチ活動を行いつつも、AKBを愛し続けている。
 ファンは生きる意味をAKBの空間にゆだね、その中での少差を楽しんでいるよ
うに思える。
 AKBの部分をジャイアンツやフロンターレなどに置き換えても成り立つだろう。
 「基本、みんなと一緒だけど、紙一枚の違いがほしい」という日本人にぴった
りの商品だと思う。

 本書では、他にも、メンバーとの親近性、下位メンバーとファンとの関係は地
域共同体的である、と書かれている。
 たまに話す機会があり、自分(有権者)の顔や名前を憶えてくれた候補者に投
票する地方選挙(市区町村議員)の感覚に近いのだろうか。

 あとがきで、著者は、今後、”AKBの聖典”=”秋元康の歌詞”の分析に取り
組みたいと書いている。
 確かにビジネス関連での成功本は多いが、作詞家がプロデューサーの場合、”
聖典”がファンを引き付けている可能性が高い。
 是非、さまざまな視座で、教祖あるいは開祖たる秋元氏の聖典をひも解いてい
ただきたい。

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2015/01/25

2015 長谷川慶太郎の大局を読む 長谷川 慶太郎

 図書館で借りようと申し込んでいたら、2014年9月30日の発刊から3か月半経って、ようやく手にすることができた。
 とは言え、米国の量的緩和の予想(今のところ当たっている)、消費税の10%への増税(これはハズレ)など理屈とともに予想を検証することができるので、なかなか面白いタイミングで読むことができた。

 やはり、大きな流れで個別銘柄が取り上げられているのは、著者の予想を検証しやすいので面白い。

 個人的に関心があったのは、だいたい以下の内容。

○ 10年物米国長期国債 金利1.4%超えたら国債価格が連鎖的に下落(暴落)する。
○ 航空機  三菱重工、川重
○ MHPS(パワーシステムズ) 三菱重工、日立の合弁会社、火力発電システムの輸出が伸びる
○ 森ビル  オフィス需要頭打ち、2020年の3年前位に飽和か
○ 3Dプリンタ  産業用は金属素材を加工できるもの。三菱重、IHI、川重、コマツ、日産、パナソニック
○ 中国 7軍区が国になって連邦化+台湾
○ 沖縄  東アジアの人と物の一大拠点
○ 欧州のシェールガス 独、伊がロシアの天ガスへの依存率を下げる

 中国については、中央政府も内紛・分離について常に警戒しているとも聞いていますが、どうなるか。
 沖縄については、物の拠点にできそうだが、人が集まるようにするには何らかの魅力が必要ではないか。

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2014/12/08

書籍:日本語練習帳


 久しぶりに新書(後世に伝えるべき内容を有する廉価な書籍)を読んだ気がした。
 問答形式で、「ハ」と「ガ」の違いから、尊敬語・謙譲語に至るまで、解説がされている。
 私たちが、無意識に間違って身に着けた話し方を見直すのにとても役立つ。
 全部をマスターすることはできそうもないが、多少、話し言葉やメール文書を改善できたように思う。

 コラム「お茶を一杯」では、著者の経験や言語を扱う姿勢を感じる。
 中でも印象的なのは、最後のコラム。言葉は相手とかかわりあいたいときに使うものである、と記している。
 自分と相手のそれぞれに理解できていない部分をわかってもらい、相手の知らない事柄を相手に知らせるために言葉を使う。
 言葉は主体性を持った表現方法であるが、それだけでは伝わらない。社会的規範を有し、これに沿った形式で伝えなくては、相手にわかってもらうことは難しい。
 逆に言えば、この規範を身につければ、相互理解がしやすくなるということでもあろう。

 子供のころ、小学校に鬼婆と呼ばれていた先生がいた。生活態度において、規範を重視していた。「時間厳守」「忘れ物厳禁」「紙を折るときは角をそろえる」「机・イスの位置は定められた記しに合わせる」「雑巾はしっかり開いてから干す」など。
 今思えば、できない子が普通にいたが、その一方で、確かに規範を守れる子どもほど算数や国語の成績が良かった(例外もあるのだろうけども)。決まったルールで解答し、決まった筆順で漢字を覚えれば、成績が良くなってもおかしくないだろう。
 今どきこうしたことを徹底すると、子どもの創造力が失われるとか、戦時中じゃないんだから、などと批判的な言い方をされるようだ。しかし、世間では、芸術家や起業家を創造力のある人と評している。彼らは、情人よりも伝わる表現に関心が強い。多くの人に伝え、多くの人と価値観を共有する必要があるからだ。
 そうした特異まれな人は少ないからこそ希少な存在と言われ、一方、労働人口の80%は被雇用者になると言われており、職場でも地域社会でも社会的規範を求められる。
 近年、コミュニケーション障害(コミュ障)が増えたというのも、幼児期~児童期における規範教育の不足からきているのかもしれない。
 社会性に関する問題は、相互問題であり、程度問題であるから、すべての人に関係することになるが、実際には、これに気づいた人の課題ということになるのだろう。

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2014/12/01

書籍:大人の「思考ノート」のつくり方


 私は、自分の読解力不足を解消できないものかと思い、最近、日本語を読むための書籍を漁っている。
 似たような課題を感じている方にお勧め。

 著者は、PISAテストを基に、文書を読むにあたって、4つの目的があると説く。
 ①公的な目的
 ②私的な目的
 ③職業的な目的
 ④教育的な目的

 学校での勉強を前提にすると④(作者の意図を読み取る、いかに論理的に説明する)が読むことの目的となっている。
 しかし、社会では、①の公文書(たいていは定型文である)、③に関する各種資料データ・書籍が多くなってくる。
 ②は小説を楽しむこと、および、その作者の背景を調べるなどすることが目的となる。ただ、本書の「ノート」づくりには不向きとのこと。(文学研究を行う上で使えると思うが。)

 つまり、著者は、本書全体を通して、本を読むにはその都度目的を意識するべきであり、また、その目的は学校で教科書を読んだときの目的だけではないと指摘しているようだ。

 なお、最終章では、愛読書に自分の頭に浮かんだ疑問点とその調査結果を書き込んで「愛読書ノート」にするよう推奨している(ここでは読書感想文のノートのことではない、念のため)。
 個人的には、研修を受けるとき、配布されたテキストに細々と講師が話した補足事項や自分なりの関連付け(該当するお客さん、関連資料の名称など)、課題(後で調べたいこと)をメモしている。
 特に、連続ものの研修となると、著作1冊がテキストになることもある。たぶん、私の仕事の場合、研修資料が著者のいう愛読書ノートになっているのだろう(違うのは、賞味期間が1,2年で短いことだろうか)。

 著者はノートの見返し、更新についても触れている。
 事業計画やマーケティングの企画に関するものであれば、見返して、更新、新規、廃棄という作業を続けることになるだろう。
 会計や法律に関する研修ノートについては、仕事で直面しない限り見返すことがないし、改正が重なるとノートごと廃棄することもある。
 ただ、今後は租税回避の研究をしようと思っており、持論の見返し、更新作業をすることもあるだろう。そのようなときには、愛読書ノートが大切なアイテムになるのだろう。

 本書は、目的に応じて本を読むことを改めて意識させる一冊であった。

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2014/11/25

書籍: わかったつもり(読解力がつかない本当の原因)


 教科書や市販の本を読んでいて、その内容について理解できないことや、日本語の文法について疑問に思うことは通常ない。
 しかし、文章の要点を表にまとめてみると、その対比によって改めて気づくことがある。また、書かれていない行間といったものも見えてくる。
 著者は本書を通じて、読解力不足を「日本語的には読めるのだが、その本質が読めていない」ことを指摘し、それを「わかったつもり」としている。
 本書では、3匹の子猫と母猫の会話、4種類の船の特徴、が例示されている。例示は少ないが、丁寧に分析されており、著者の言いたいことが伝わってくる。
 個人的には、ビジネス書や税務の本を読むことが多く、これらの本には図表が豊富に掲載されている。本書を読んでからは、対比や行間を意識するようになり、著者が伝えたいことをより早く理解できるようになった気がする。

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2014/01/26

【電子書籍販売のご案内】

小さな会社で節税を極めたいなら
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【近況】
 2013年9月に、某事業協同組合様のご依頼で、組合員向け税務相談の相談員をさせていただくことになりました。すでに満席で、内容は相続税や金融税制の予定です。やはり、外せないテーマですね。
 2013年7月~8月、東京税理士会での研修を受講しました。テーマは、相続税・贈与税、消費税、そして、金融税制の改正でした。具体的な影響が明確になりました。
 2012年9月~11月、東京税理士会主催・A-Z2ndプログラムにおいて租税法を学びました。全10回×5時間、毎週土曜日の講義はヘビーでしたが、内容の濃い経験でした。
 東京税理士会(渋谷支部)にて、2012年6月11日「士業の現場で使えるコーチング」セミナーを開催しました(2012.06.11)。

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2013/11/19

老子 C15 道を体得した人物

C15 道を体得した人物

【要旨】
 昔の優れた「士」は、見た目は微妙にして神秘的な洞察力を備え、計り知れないほどの深さがある。
 理解を超えているがゆえに、その姿を語るしかない。

【解説】
 守屋洋氏の解説によれば、優れた「士」は計り知れない深さを持っているので、説明のしようがないのだが、あえて形容すれば以下の通りになります。

 慎重さ・・・氷を張った川を渉るよう ⇒ 慎重そのもの
 注意深さ・・・四方の国を畏れるよう ⇒ 用心深い
 厳かなこと・・・(誰かを訪ねて)客として招かれたように端然としている(きちんと座っている)
 和やかなこと・・・氷が解けるときのよう ⇒ こだわりがない
 厚いこと・・・加工される前の材木(僕;あらき)のよう ⇒ 飾り気がない 
 心の広さ・・・谷のよう、併せのむことは濁った流れのよう ⇒ 包容力がある

 汚濁しているようであるが、いつの間にか澄み、制止しているようだが、豊かな生命力を宿している。
 道を体得した者は、完全であることを願わない。だから、ほころびが出ても繕わないのである。

【小さな会社の場合】
 小さな会社で参考にできることは2点ありそうです。
 第一に、周囲を率いるような目立つ行動に走らないこと。慎重深さと用心深さをもって、環境の変化を分析し、対応策を決めることです。
 第二に、表面的なことにこだわったり、あこがれたりせず、包容力をもって受け入れる気持ちを持つことでしょう。
 世の中は常に動いています。環境も変化します。自社の資金、人材、社長も変化します。
 組織中に、一時的に環境不適合な面が現れることもあるでしょう。しかし、それは、当然のことです。意識して徐々に治す努力をすればよいのです。
 清濁併せ飲む包容力があれば、夢のような事業計画を引っさげた饒舌なコンサルタントなどに心を動かされて、一気に組織や企業理念、商売の態様、中身を替えようなどと思うことはないのです。

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2013/11/12

C14 無状の状、無物の象

【要旨】
 見ようにも見えないもの(夷)、聴こうにも聴こえないもの(希)、とらえようにも得られないもの(微)は、突き詰めようがない。だから、そういうものだとするより他ない。

【解説】
 守屋洋氏の解説によれば、以下の通りです。
 「道」は幻でもなく、絶えることなく続いているが、形のない形、姿のない姿とも言えるし、「おぼろ」な状態と言ってもよい。
 このような「道」、太古から現在に至るまで、一貫して万物を主宰している。これが「道」の本質なのだ。

 同氏の解説だけでもイマイチすっきりしませんが、「世の中はだいたいこんな感じ、っていうものが決まっているもんだよ」と言っているようです。
 また、章の最後の行には、古の道を執りて、以て今の有を御す、とあります。
 要するに、世の中の動きを察知しようとしても、全容が明らかになりませんから、無理だよ。でも、過去から続く世の中の道理に沿えば、現象を正しく捉えることができる。
 そういうことを述べているのでしょう。
 

【小さな会社の場合】
 世の中の動きを掴むことも、その原因を理解することも難しい。
 世の中の動きがすべて見えたり、聞こえたりしてくるものではないし、世の中の位置側面しか見聞きできない。
 人間は、限られた見識と拙い智恵で、原因を探り、世の中を管理しようとしている。
 世の変動は、自然に治まるところに治まることは昔からの経験で知られている。
 たとえば、いくらスマホや携帯が売れたとしても限りがあり、大売れした反動は不良在庫や過剰設備として大きく損することになる。
 大きく益すれば大きく損する時期もあり、平均すれば、結局、放っておいた場合と差がないことも多い。行き過ぎれば元に戻ってくる。

 昭和末から平成初めのバブル経済期には、地価が上昇し、都心に人は住めないほどになったが、現在は昭和54年ごろ時価、つまり、バブル前のオイルショック後ごろの時価に落ち着いている。
 物価も同様。バブル景気で上昇しても、消費者や消費量には限りがあり、最後は在庫や生産設備の過剰により、平成のデフレにつながった。

 中小企業は、「世の中というものは、ゆきつくところにゆきつくものだ」と心得て、小回りの良さを活かし、時勢に適度に合わせて小波に乗ればよい。

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2013/11/05

C13 こんな人物なら天下を託せる

【要旨】
 立派な人物は、他人による評価に拠らず、わが心を戒める。
 称賛も批判も本質的には自分の欲を刺激するものである。
 評判に拠らず、自らを愛おしむような態度を崩さない者なら、天下を任せられる。

【解説】
 この章のポイントは以下のふたつ。
 (1)他人の評価、すなわち、称賛や批判は、本質的に違いはなく、自分(人間)の欲を刺激するものである。
 そのようなものに対し、心が反応することは他人の人生になってしまう。
 心が反応することなく、本気で自らの生き方・態度を崩してはならない。
 (2)輪w紙(心身ともに)を大切にする人物にこそ、政治を任せられる。
 他人の称賛、批判を気にする人に政治を託せば、称賛・批判で人の欲を刺激するような政治を行うようになる。
 作為的に人民をコントロールするようになり、無為自然から遠い体制を作ってしまう。無理のある体制は早晩崩れてしまう。
 

【小さな会社の場合】
 小さな会社が、ほめられると喜んで働くような態度を見せれば、相手はどういう態度をとるでしょうか。
 ほめてやれば働く、困った顔を見せれば無料でやってくれる、頼み込めば緊急対応してくれる、と思って接触してくることでしょう。
 「うちは安い客しか来ない」と言っている社長さんほど、安い客を誘い込んでいることが少なくないのです。
 こうした態度を改善する方法としては、損益予想を作ることです。
 その効果のひとつは、自分なりに「値付けに関する決まり」を意識するようになることです。予算から割り出した販売価額を前提に交渉するようになり、安易な値引きにつながりにくくなります。その結果、会社が長続きします。
 もうひとつは、予算と実績の差異から、自社と世間相場とのズレを認識することができます。生き抜くための軌道修正を図れることです。

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2013/10/26

C12 欲望の充足には限りがない

【要旨】
 この章で述べていることは、表面的な欲望ではなく、人間の本質を充足させよということでしょう。要約すると次の通りです。
 欲望を満たせば、五感的には満たされた気にはなるし、周囲も注目するでしょう。しかし、こうした刺激はエスカレートしていくため、追求を止める訳にはいかなくなる。
 一方、人の本質を捉えた人は、一時の刺激に反応することなく、また、周囲の人々もその人の精神性や安定性に惹かれるようになる。

【解説】
 きらびやかな色彩、すばらしい味覚、快い音楽は人の五感をおかしくする。
 狩の楽しみ、貴重な財宝は、心や行動をおかしくさせる。
 聖人は、内容の充実に努め、華美を追求しない。欲望の充足よりも「道」を重視する。

【小さな会社の場合】
 この章で、小さな会社が参考にできることはふたつあります。
 ひとつは、見た目をよくしろと勧誘してくる業者に注意することです。
 ホームページや会社案内といったものは、きらびやかにしようと思えば限りがありません。電子商取引やブログ機能をつけていくと、会社が大きく見えてきます。一旦始めるとエスカレートしていくばかりでお金がかかります。
 その一方で、ホームページから見込み客が問い合わせしてきても、小さな会社はキャパシティがないですから、見込み客を取り逃がすことも多くなります。さらに、対応が下手だと、悪い評判がたつとも限りません。
 結局のところ、広告業者だけが儲かって終わるということもよくあります。

 もうひとつは、政策による特需やブームに惑わされて、自社・自分に合っていないサービス提供をしないことです。
 特に、先行投資を要するものには注意が必要です。途中で止められなくなってしまうからです。
 会計事務所であれば、相続税法改正で、申告しなくてはならない人が増えるだろうとの予想から、資産税のノウハウを身につけようという主旨の税理士向けセミナーが流行っています。
 元来、年間計画に基づいて事務所運営をしようとしている人にとって、相続税は臨時収入に過ぎません。
 確かに、「相続税に強い税理士」というと頭も良くて、収入も多そうに聞こえます。しかし、顧問先の会社にご不幸があったときは、自分でせず、信用できる他の税理士にヘルプを求めることも一考です。
 初めてのことは勉強になるから引き受けるべきとの意見もありますが、自分の目標やキャリア、優先すべき物などから総合的に考えるべきでしょう。
 詳しくもない分野で、しかも複雑なケースになると大きなミスも招きやすくなります。結果として、依頼人に迷惑をかけ、自分の日常業務にも支障を来すことになってしまいます。かっこをつけるのと、自分を磨くのとは違うでしょう。

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2013/10/19

C11 無があるから有がある

【要旨】
 老子はこの章で、有と無は相対関係であると言っています。
 1か0かという区別ではなく、物事の表面的な特徴は、有無ではなく、程度の違いであると。
 有能な人だけでは社会は成り立たちません。私たちは、様々な人々と、様々な組織や関係性の中で暮らしています。
 荘子では、類語として「無用の用」が挙げられています。まっすぐな木は、成長すると材木にされてしまうが、曲がったりコブが多い木は、いつまでも切り倒されず、立ち枯れまで生きながらえるという話です。
 どちらも同じ種類の木なのに、人の評価基準によって、伐採されたり、されなかったりする。そこにも、相対的な関係が存在するというわけです。

【解説】
 車輪を作るときには、30本の輻(や)を1つの轂(こしき)に差し込んで作る。轂の中が空洞になっているから、車輪を作れるのである。
 茶碗や部屋は、中が空っぽだから役に立つのである。
 有が有としての意味をなすには、無の働きがあるからである。

【小さな会社の場合】
 お客様が注文や相談をするときは、「大手に頼むほどではないけど、下手なところに頼むのも心配だ」という気持ちで中小の事業者に問い合わせてきます。
 このとき、大きな仕事は請け負えないけれど、技術的に遜色ないような会社が重宝されます。
 大企業は、大規模設備投資や人材採用を行うことがあり、それを数十年かけて回収します。景況やブームにより、業績が大振れすることもあります。
 小さな会社は、大型投資が不要の上に、技術・作業で収入を得ている割合が高いです。人力で収入を得るため、景気が良くても受注に限度があります。一方、不況でも、メンテナンス作業が増えるので、売上の落ち込みは大企業ほどはありません。
 小さな会社は、社会構造において、どういったポジション、収益構造をとるべきか、常に認識しておく必要があります。間違っても、安易に消費財の小売業や見込み生産にシフトしないことです。
 たいていの場合、ポジション的には現状がよいと思いますが、サービスや技術のマイナーチェンジや日ごろのスキップアップが成功要因になるでしょう。

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2013/10/12

C10 生じて有せず、長じて宰せず

【概要】道は万物を生み、万物を育てる。しかし、万物を所有もしなければ、支配はしない。これぞ、道にそなわっている大いなる得である。
 ※ 道=天地、自然と置き換えた方が理解しやすいでしょう。

【要旨】この章では、以前の章と同じことを述べています。
 万物は道(天地、自然)から様々な素材を取り込んで、その体を成しています。しかし、道に支配されている感じはしない。
 だから、自然に感謝することはあっても、恨むことはない。それは、道が恩着せがましい態度をとらないからだと、老子は述べているようです。
 ただ、希望する物、タイミングを天地に願ってお供えしても、応えてはくれないということにもふれています。
 これを受け容れられない人は、災害や病気などの不幸が重なると、天を恨むことになるのでしょう。
 つまり、人は自然にはかなわないのですから、人間側も柔軟になる必要あると言っているようです。

【小さな会社の場合】実際、他人や他の動植物、自然環境に配慮し、骨折りしている人はまず恨まれることはありません。但し、自己顕示のためでは逆効果になります。
 具体的には以下のようなチェックポイントがあります。
(1)自分を見つめ無為の道を守っているか。
→止観(しかん、日頃の活動をいったん止めて、座禅などして自分をみつめること)などして、自分が強引なことをしていないか確認する。
(2)赤子のように、たくましく、柔軟に生きているか。
→周りに抵抗することはできない。作為的ではなく、無為自然に環境に合わせて最前の生き方を選んでいるか。
(3)いささかの汚点もなく、心を清めているか。
→他社を支配したり、わざと遠ざけたり、陥れたりしていないか。
(4)愛民治国(組織統制)にあたり、才知を振り回していないか。
→法律や規則など知識や知恵に基づく方法を振り回して、管理統制していないか。必ず、従業員は逃避行動や潜脱行為に走るようになる。
(5)自然の移り変わりに対して、女性のように控えめな対応をしているか。
→環境変化に抵抗することは難しく、受け容れる方が結果的にわだかまりも少なく、対応能力も上がり、トラブルなしで生きながらえやすい。だからといって、妥協ばかりしているとい

うわけではない。
 ここでアウフヘーベン(止揚)によって、共通の目標を模索し、共生の道を探るだけのしたたかさ(頭の良さ)が必要となります。

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2013/10/05

図書紹介: ドロ沼相続の出口


 本日は、知人の公認会計士・弁護士の眞鍋淳也氏が発刊された著書を紹介させていただきます。

 氏とは、6年位前に目黒区の文化会館で一緒に講演をさせていただいた仲です。最近は、件数は少ないのですが、クライアントの法律相談をお願いしています。

 職業柄、私も相続税や遺言の本を読むことがあります。
 「争族」の話は、相続税や遺言に関する本の中でエピソードとして紹介されていることが多いです。
 本書は、その争族に焦点を合わせ、どんなときに生じやすいか、また、著者の体験から具体的な解決策を紹介されています。

 起きやすいケースとしては、財産が少ないケース(よく聞く話です)、団信で住宅ローンがチャラになったケース(これは初めて聞きました)だそうです。
 、多額の住宅ローンが残って気の毒だね、と親せきからも同情を買っていたのに。住宅ローンが突然消滅して、不動産が財産として丸ごと残ってしまう。そこに鵜の目鷹の目の親せき縁者が集まってくる(ことがあるそうです)。
 現金以外のものは分けにくいから、もめる原因です。まして、相続人のひとりが住んでいたりでもしたら。

 意外だったのが、代襲相続や兄弟姉妹の遺留分の有無について把握してない人が多いことでした。
 子がいない夫婦の場合、亡くなられた方の親や兄弟姉妹が相続人になるケースがあります。
 遺言に従うと、「あなただけズルい!」って言い出す兄弟姉妹が必ずというほどいます。遺言の内容次第で、兄弟姉妹に遺留分がないこともあります。
 その場で応ぜずに、必ず、「弁護士に確認してきます」「急いで決めたくないから」とだけは言うつもりでいた方がよいでしょう。
 顧問先の例ですが、亡くなられた人の家に入ってきて、相続の打ち合わせをしながら、金目の食器を持ち帰ろうとする図々しい親せきがいました。取られたら惜しいと思うものがあれば、外で会うなどの工夫も必要でしょう。

 専門家でもないと弁護士探しはなかなか気の重いことでもあるでしょう。つい、知人に紹介してもらうことが多くなりますが、弁護士だからといって争続を扱うのがうまいとは限りませんし、税金の計算が得意なわけではありません。特に、急ぎの時に税理士に問い合わせているようでは間に合わなくなるかもしれません。

 首都圏なら著者の事務所に問い合わせていただくのがよいと思います。
 もめそうではないけど不安だとか、遠方だから旅費の負担が重いということでしたら、地元の役所で設置されている無料弁護士相談でもいいと思います。
 大事なことは、面倒がらずに、足を運んで、確認・相談することです。

 本書では、農地や法人に絡む争続の具体的対策が紹介されていますので、会社社長だけでなく、専門家としては一読の価値があります。
 ただ、下手に、アドバイスすると非弁行為となる以上に、クライアントに不幸をもたらす危険性があります。
 つまりは、公認会計士と弁護士のダブル資格を持つ人に相談するのが、心配ないでしょう。。。ということになるのですが。

 時々、「弁護士・税理士」という方を見かけますが、日ごろから法人税や相続税を扱っているとは限りません。私流の表現をさせてもらうと、受験算数のようなパズルを解くようなセンスが必要です。税理士でも相続税の計算でミスが発生しやすく、そのミス探しを専門ににしてる税理士がいるくらいです。
 中には、会計事務所を経営している人もいますので、要は、目の前の弁護士が、相続税の計算も得意かどうかを確認することが大切です。とは言っても、面と向かっては聞きにくいかなとも思います。
 
 民法(相続・親族)、経済法(会社法など)、相続税法、そして争続を総合的に扱える人となると、「公認会計士・弁護士」のダブル資格を持った方をさがされるとよいと思うわけです。ご参考までに。

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C09 功遂げ身退くは天の道なり

【要旨】
 この章では、引き際の大切さを述べているようです。
 行き過ぎには注意せよ。身の退きどきが大切。

【解説】
 老子は、以下の例を挙げて、仕事を成し遂げたならば、身を引くのが天の道であると説いています。
①水を注ぎ過ぎればあふれる
②鋭すぎる刃は折れやすい
③財宝を部屋にためても守りきれない

【小さな会社の場合】
 小さな会社に引き直すと次のようになると思います。
①キャパシティ・オーバーの受注や投資をしすぎれば、人も機材も余る。バブル崩壊後のリストラと同じことが起き得る。
②人も機材も鋭いのは疲弊しやすい。また、対応分野が狭いと、専門性が高まり、周囲の信頼性も上がるが、時勢からはずれると振り返りもされなくなる。
 通信関係で言えば、PHS、ポケベル、PDA(ザウルス)事務機器なら万年筆、簡易印刷(プリントゴッコ)、ワープロ専用機。
 (中には、その得意な需要から、絶えそうで絶えないインスタントカメラ、ISN64もあるが。)
③財産を持つと、その保全にも金がかかる。固定資産税、警備費用、保険料。
 不動産や物でなく、預金でおいていても、急激なインフレや金融機関の破綻で一夜にして財産を失うこともある。

 理想的には、日常生活を送れるだけの収入を死ぬまで稼げばよいのだが、財産運用で稼ごうと思ってもなかなかうまくいかないのが現実。
 結局のところ、年をとってもできそうな仕事(会長、顧問、あるいは、バイトでも)を末永くさせてもらえるような人間関係を意識しておくのがよいでしょう。
 具体的には、親子間や社長・後継者のコミュニケーション、社長は別会社で第二の経営者生活を送るなど。後任の経営者がやりやすく、しかも、自分自身が老後のキャッシュフローを

得られるような関係を模索することとなります。

(余談)
 年金や老人健保、介護保険が安心して利用できる世の中なら少しは緩和できるかもしれません。
 公的保険が頼りにならなければ、不動産収入を確保するか、退職前に老後の資金をためるか、ということになります。
 しかし、不動産収入は管理費を引くと利回り8%程度にとどまり、空室が30%にもなれば、生活費に困る家主も少なくありません。管理委託費を節約しようとしても、高齢になると

自分で管理をすることも難しくなります。
 金融資産ならいいかというと、使い勝手はいいのだが、おいておくと損をするのが普通です。デフレ時には利息が少なく、1億円くらいあっても生活はできません。一方、インフレに

なり利率が上がると、利息が多いけど、現金の価値が相対的に下がってしまいます。
 物価を上回り、かつ、生活費を確保できるだけの利回りを確保するようなことは、プロの投資家でも難しく、素人なら、通常プロの餌食になってしまうことでしょう。

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2013/09/28

C08 上善は水の如し

【要旨】
 君子は、水と同じように、逆らわない生き方をしてこそ、失敗を免れることができるのである。

【解説】
 老子によると、最善の生き方は水のようなものであると言います。
 水は、①万物に恩恵を与え、②相手に逆らわず、③人の嫌がる低いところへと流れていくからです。
 水を聖人に置き換えると、聖人は、①周囲の役に立ち、②相手をコントロールしたり作為的に接することはなく、③他人を先に立ててやる、ことになります。

【小さな会社の場合】
 守屋洋氏の解説に基づいて、水の特徴から小さな会社の有り様を考えると次のようになります。
 解釈はこれに限る必要はありませんので、皆さんにおいても考えてみてください。

①君子は、低いところに身を置き、淵(流れが緩やかで深みのあるところ)のように深い心を持っている。
→ これは組織の役員、管理職の有り様を表している。

②与えるときは分け隔てがなく、言うことに偽りがない。
→ 自分の価値観で区別をし、統制するわけではないので、嘘もない。

③(他人を立てるような君子ならば)国を治めても破綻を生じず、物事には適切に対処し、タイミング良く行動に移る。これぞ水の在り方に他ならない。
→ そのような君主なら、政治ができるだろう。

 参考に、バカボンのパパの解釈も紹介します。
 「立場としては一番低いところを、いろいろな考えが浮かんだら一番深いものを、友達と遊ぶときは優しい態度を、言葉は信頼できるものを、事件が起きたら、そんなものはなくなるのだという自然任せを、何かするときはグッドタイミングを良しとするのだ。」
(バカボンのパパと読む「老子」・角川SSC新書より引用)

 いずれにしても、謙虚に、慎重に、包容力をもち、時機をみて(たいていは、すぐに)行動するのがよいということでしょう。

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2013/09/26

書評 辞める前に読む!


 本書を読んでいて、いまさらながら、組織というところで、こんなに気を遣って生きていくなんて考えられないなぁと思った次第です。
 おそらく、組織という価値観の違った人たちが集まる場で退職までやっていける人というのは、コミュニケーションに関して苦手意識がなく(自信過剰でなく)、あるいは、組織での葛藤をごく当たり前に感じている人なのかなと思うのですが、どうでしょうか。

 本書には、コミュニケーション不適応のタイプ分けと、その対処法も記されてはいるのですが、やはり、人間関係はケース・バイ・ケースですから、参考までにというところでしょうか。
 特に、著者が、苦手な相手との間に線引きをすることを勧めていますが、それができれば楽なんだろうなと感じます。
 組織内部でそれができなければ辞めるという手もあるのでしょうけど、結局、どこに行っても、何を始めても同じ悩みに陥るのではないかと思います。

 私でも、独立起業後、取引先の社長さんや事務局を相手にする上では、過度に仕事や責任を負いこまないように気を付けています。途中でできなくなると、迷惑をかけてしまいますから。
 その点で本書の第1章「上司と部下」の項目が参考になりました。それでも不適合の相手はいますが。

 著者に共感できた点は、第5章の自分自身へのわりきり方で、中でも、「ヤリガイ」を求めても消えていくだけという箇所が気に入っています。
 自分に合った仕事、やりがいを感じる仕事、などというものを、世の中が私たちのためにわざわざ用意しておいてくれるはずもありません。
 著者によれば、成長動機と欲求動機を満たす方法、すなわち、才能磨きと欲求を満たすように自分の特性を活かすと、ヤリガイをゲットできるそうです。
 そういうことだなぁと思います。自分の人生は他人が与えてくれるのではなく、自分で創り上げる自己満足の世界だと思いますから。

 若い人ほど相対的にリアルなコミュニケーションは減っているらしいので、社会に出たら急に他人とのコミュニケーションが上手くいかないなぁと悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
 社会人でなくても、学生でも、起業した人でも参考にされるとよいと思います。

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